私は小学生の時、南小に通っていました。学校がおわるとふだんは外であそびましたが、雨の日は南小の図書かんでおもしろそうな本をかりて帰ります。4年生のある日、『ものがたり 数のふしぎ・形のなぞ』という本をかりました。算数がすきだったわけではありません。だい名の「ふしぎ」と「なぞ」と「ものがたり」を見て、なんとなく手にした本です。家に帰ってからページをめくりました。一つめの「数のふしぎ」という話はつぎのような文ではじまります。


 大阪(おおさか)(じょう)にいる太閤(たいこう)(ひで)(よし)のところへ、ある()、お()にいりのけらいの()()()新左(しんざ)衛門(えもん)が、ひょっこりやってきました。新左(しんざ)衛門(えもん)は、(かたな)のさやをつくることがじょうずで、どんなでも、そろりとはいったところから、()()()などというおかしなみょうじをつけていました。たいそう(はなし)がうまく、ちえのある(おとこ)でいつもこっけいなことをいっては、太閤(たいこう)さんをよろこばせていました。

 ある日、太閤さんはたいそうごきげんで、「新左衛門にほうびをやりたい。ほしいものがあったら、えんりょなくもうすがよいぞ。」と言い出します。新左衛門は、「えんりょなくもうしあげても、かまいませんか。」とたしかめた後で、「それでは、今日は、お米を一つぶいただきたいです。」と言いました。太閤さんは、「お米を一つぶ?ほう、これはまた、かわったのぞみじゃな。たったそれだけか。」「はい、明日はその2ばいの二つぶ。あさっては、そのまた2ばいの四つぶ。というように、毎日、前の日の2ばいにして、50日分のお米をいただきとうございます。」「さてさて、よくのないやつじゃ。金の茶がまでもほしがるかと思っていたら、そんなことか。よしよし、よいぞ。」「では、おやくそくしましたよ。それでは、50日たったら、いただきにまいります。」

 ……そして50日がたちました。お城の米ぐらで、じけんがおこります。

【出典 宮下正美,数のふしぎ・形のなぞ,偕成社,1962


 さて、みなさんにしつもんです。大阪城の米ぐらで、どんなじけんがおこったのでしょう。 

 この本には、おもしろい話がたくさんのっていて、南小をそつぎょうするまでに、気にいった話を何回も何回も読みました。そのうちに、きらいだった算数が好きになっていました。

高校生の時にこの本を買おうとしましたが、もうどこにも売っていませんでした。大学生で先生になるためのべん強のため南小に1か月来た時に、図書かんでさがしましたがもうなくなっていました。しばらくあきらめていましたが、15年ほど前に、えちぜん市の図書かんでそうだんしたところ、ふくいけん内の図書かんに1さつのこっているのを見つけてくださり、もういちど読むことができました。めでたし、めでたし。 

 

 4月は「子どもの読書月間」。今年の標語は「いっしょに よもう、いっぱい よもう」です。
  こどもの読書の入口になるWEBサイトを3つ紹介しますので、のぞいてみてください。(クリックしてください。)

「子供の読書キャンペーン」特設ページ(文部科学省HP)

「しらべてみよう!」国立国会図書館キッズページ

「キッズページリンク集(公共図書館)」(国際子ども図書館)